英語教育に認知言語学の知見を活かすことは、どうして大事なのか?

1. はじめに

外国語教育において、言語学の研究成果は非常に重要な基盤となります。しかし、最近の言語学、特に認知言語学の発展を知らない人の中には、「言語学は語学教育には役立たない」という誤った固定観念を持つ人がいます。そのような誤解が広まると、外国語教育の基本的な土台が揺らぐことになりかねません。本論では、認知言語学的アプローチが外国語教育のさまざまな側面において重要であることを示していきます。

2. 外国語習得の困難さと言語学の重要性

言語を習得するためには、綿密な計画と多大な努力が必要です。英語学習を例に考えると、発音、語彙、文法、読解、会話、作文、プレゼンテーションなどの分野をカバーする必要があります。教科書に収められる事項は英語のごく一部に過ぎませんが、体系的な基礎知識の習得は不可欠であり、言語学の成果を活用することでその効果を高めることができます。

3. 語彙、文法、会話、読解の関連性

語彙、文法、会話、読解は密接に関連しているため、それらを関連性を考慮せずに別々に教えるのは得策とは言えません。認知言語学では、これらの分野は連続的なものであり、関連性を持たせて教える必要があると考えます。

3.1. 文法教育の重要性と範囲

文法は語学学習の出発点であり、語彙や会話、読解とも密接に関連しています。認知言語学では、語彙と文法を連続体として捉え、文を組み立てるには両方の知識が不可欠だと考えます。また、動詞に伴う文法要素や、話者の意図によって選択される文法形式についても理解が必要です。

3.2. 語彙学習の方法

語彙は、テーマ別・場面別の会話や読解教材を通して付随的に学習できる面もありますが、体系的なボキャブラリー・ビルディングの授業も有効です。単語を単体で丸暗記させるのではなく、多義性、類義語の使い分け、連語などを理解させることが重要です。認知言語学的な観点から語彙を整理し、教えることが求められます。

4. 言語学のパラダイムシフト

近年、言語学、特に認知言語学の分野で大きな発展がありました。しかし、その発展を知らない人の中には、「言語学は語学教育に役立たない」という誤解を持つ人がいます。そのような誤解を解くために、言語学の新しい潮流について概観します。

4.1. 言語学の歴史と分野

言語学には、言語の歴史的研究を行う「フィロロジー」と、理論構造に重点を置く「言語学」があり、両者は相互に影響し合っています。言語学にも様々な分野や学派があることを理解することが重要です。

4.2. チョムスキーの生成文法と認知言語学の発展

チョムスキーの生成文法は、言語を心的処理として捉え、認知科学の発展に寄与しましたが、意味を排除した結果、言語の現実を十分に説明できなくなりました。そこから、「理論言語学は意味や文化を考えない」「語学教育に役立たない」といった誤解が生じました。しかし、認知言語学、機能言語学、語用論、対照言語学、談話分析、社会言語学などの分野で、言語の具体的な側面を説明する理論が発展してきました。

5. 認知言語学の語学教育への応用

認知言語学は、語彙、文法、会話、読解の理解に幅広く応用できます。

5.1. 語彙理解への応用

認知言語学では、メタファーやメトニミーを言語の基本的な認知処理と捉えます。多義語の意味拡張を理解するうえで、認知言語学的説明が重要です。また、類義語の使い分けや連語の理解にも、認知意味論的アプローチが有効です。

5.2. 構文理解への応用

認知言語学は、認知フレームと構文の対応や、意味に基づく構文の動機づけを重視します。英語が日本語より他動詞構文を多用するのは、認知的意味づけの違いによるものだと説明できます。使役や知覚を表す構文、無生物主語構文なども、認知意味論的に説明が可能です。

6. おわりに

近年の言語学、特に認知言語学の発展により、言語教育への応用可能性は格段に高まっています。語彙、文法、会話、読解の関連性を言語学的知見に基づいて体系化することが重要です。外国語教育において、言語学・英語学の知見は必要不可欠であり、教育効果を高めるためにも欠かせません。

また、言語学を正当に評価し、その有用性を理解する教員の充実も急務でしょう。外国語学科の発展のためにも、言語学と語学教育のさらなる融合を進めていく必要があります。

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